【特集】吹奏楽部活動と地域展開

特集お知らせ

近年、部活動は「学校中心」から「地域へ/地域とともに」の移行・展開の流れがあります。このページでは、特に吹奏楽部をテーマに「部活動の地域展開」に関する情報を整理します。

記事の最後には部活動の地域展開に関する資料をリンク集形式で掲載しています。

いま、部活動は“学校だけ”で支え続けられるのか?

部活動のイメージ
部活動のイメージ – Photo by 写真AC

かつて部活動は「学校のクラブ」「顧問の先生の指導」「校内での練習」という構造で成り立っていました。しかし近年は、教員の多忙化、少子化、施設の課題などから学校単独での継続に限界が見えはじめています。特に吹奏楽部は人数・楽器・指導者・練習場所というハードルが複合的に存在します。

背景課題の例
教員の多忙化顧問の専門性不足・土日の負担
少子化人数不足で合奏が成立しない
施設問題防音・保管場所の確保が困難
多様なニーズ学校単体では演奏経験を広げにくい

背景

2022年にスポーツ庁文化庁が「部活動地域移行化」(2024年末から「地域展開」)という方針を打ち出しており、2025年5月時点で「休日は原則すべての部活動において地域展開を実現させる」という提言を出しています。

日本は少子化が進んでおり、学校においては教員の働き方改革が進んでいます。部活動は教員の負担となる部分が多く、教員の負担軽減のために「部活動を学校だけで完結させず、地域に展開または移行していこう」という動きが出ています。

部活動の地域展開は主に中学校が話題の中心となっています。今後は高等学校にも広がっていく可能性があります。

そもそも「部活動」とは

学校のイメージ
学校のイメージ – Photo by 写真AC

学校の教育活動は、文部科学省が定める「学習指導要領」に基づき実施されます。学習指導要領では「部活動」は「教育課程外の学校教育活動」と位置づけられています。

そのため、部活動は法令上の義務として必ず実施されるものではなく、学校の判断により実施しないこともあります。また、全ての生徒が部活動に加入する必要はなく、生徒の自主的・自発的な参加によって行われるものです。

その一方で、学習指導要領では「学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること」としています。

約90%の生徒が部活動に加入・部活動によるメリットも

2015年の日本中学校体育連盟の調査によると、中学3年生の男子89%女子92%が運動部活動または文化部活動に加入しています。

中学3年生の部活動状況
全国の中学3年生の部活動状況(日本中学校体育連盟の資料を元に作成)

日本中学校体育連盟は、部活動を通じて次のような効果があるとしています。

  • 教員が生徒と真剣に正面から向き合う
  • 生徒、保護者、地域社会との相互理解を深め、信頼感を高める
  • 生徒相互の理解を深め、仲間意識や所属感を高める
  • 各競技の技術・技能や科学的知識の向上体力の向上
  • 異年齢集団による社会性、忍耐力、表現力、伝達力、思いやりなどの育成
  • 自分自身やチームで目標設定し達成に向かう力意欲の向上
  • 学校全体における向上心、意欲、所属感・愛校心の高まり
  • 少ない費用で安心して興味・関心のある活動を保証
  • 各教員の生徒理解力、生徒指導力や教科指導力の向上
  • 他校教員との交流を深め、教員間・学校間ネットワークを構築

(出典)日本中学校体育連盟「次期学習指導要領に係わるヒアリング資料」(2016年)

教員・学校施設の限界

近年、教員の働き方改革や、土日休日の部活動負担軽減が社会的なテーマになっています。学校側に過度に依存した運営では、顧問教員の負荷増・活動時間の制約・施設・備品の老朽化などが課題となっています。

少子化・部員数の減少

中学校・高校ともに生徒数の減少が進むなか、単独の学校で十分な部員数を確保し、活動を続けることが難しくなってきています。特に吹奏楽部では楽器数・合奏人数・指導体制の確保が大きな課題です。

吹奏楽連盟の加盟団体数

小学校・中学校・高等学校の吹奏楽連盟の加盟団体数は年々減少傾向にあります。

2015年の加盟団体数が小学校1,147団体、中学校7,213団体、高等学校3,805団体だったのに対して、2024年の加盟団体数は小学校803団体、中学校7,055団体、高等学校3,577団体に減少しています。

特に、新型コロナウイルスの影響を受けた2020年は大幅に減少しています(前年からの減少数は小学校110団体、中学校83団体、高等学校71団体)。

吹奏楽連盟加盟団体数の推移のグラフ
吹奏楽連盟加盟団体数の推移(全日本吹奏楽連盟の実態調査を元に作成)

地域展開の種類

学校部活動地域連携型

学校が主となりつつも、地域から部活動指導員が派遣されたり地域施設を活用したりするタイプです。例えば休日は地域指導員が部活動を指導するケースがあります。

平日と休日で指導者が異なる場合、指導の一貫性を確保する観点から緊密に連携することが求められています。

地域クラブ型

学校の枠を超え、複数校の生徒や地域住民も含めて一つのクラブを立ち上げて活動するタイプです。特に学校の枠を外して「地域クラブ」として吹奏楽部を実施する例があります。

民間委託型

自治体が民間事業者に部活動の指導・運営を委託するタイプです。学校単位では指導が難しい場合の代替策として注目されています。

地域展開の課題

部活動を地域に展開するにあたって、次のような課題があります。

  • 指導者の確保・育成
  • 用具・機材・楽器・施設(特に吹奏楽では楽器・防音・練習場所がハードル)
  • 地域・学校・保護者・自治体・民間団体の役割と連携
  • 持続可能な運営モデル(学校任せではなく、地域が支える構造)
  • 生徒・部員・保護者にとって魅力ある活動内容の設計
  • 保護者の経済的負担の増加(学校では無償で活動できていたものが、地域に展開することで有償になる場合があります)

部活動改革

令和8年度(2026年)から部活動の「改革実行期間」がスタートします。より一層、部活動の「地域展開」が全国的に広まっていく見込みです。

部活動改革の理念

スポーツ庁は、「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」(令和7年12月)において、次のような理念を示しています。

  • 急激な少子化が進む中でも、将来にわたって生徒が継続的にスポーツ・文化芸術活動に親しむ機会を確保・充実
  • 障害のある生徒や運動・文化芸術活動が苦手な生徒等を含め、全ての生徒が希望に応じて多種多様な活動に参加できる環境を整備
  • 地域クラブ活動においては、学校部活動が担ってきた教育的意味を継承・発展させつつ、地域全体で支えることによる新たな価値を創出

部活動改革のスケジュール

令和5年度〜7年度は「改革推進期間」として、部活動改革が進められてきました。令和8年度からは「改革実行期間」となり、すべての自治体で部活動改革が進んでいく見込みです。

  • 令和8年度〜10年度:改革実行期間(前期)
  • (中間評価)
  • 令和11年度〜13年度:改革実行期間(後期)

部活動改革の方針

これからは、学校部活動をベースとした地域との連携など、地域の実情に応じた多様な改革が進んでいく見込みです。

とくに休日の部活動において、改革実行期間内に原則、全ての学校部活動において地域展開の実現を目指します。

現時点で部活動改革に着手していない自治体においても、前期の間(令和10年度まで)に確実に休日の地域展開に着手するとされています。

中山間地域や離島など、地域展開が困難な場合には、部活動指導員の配置が推進されます。

したがって、部活動の地域展開は全国的に広まっていくことが予想されます。

(出典)
部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン(令和7年12月)

吹奏楽部の地域展開

吹奏楽部のイメージ
吹奏楽部のイメージ – Photo by 写真AC

吹奏楽部・文化系部活動は、運動部と比べて「地域展開」が進みにくいという現状があります。理由として「楽器・場所・指導者」が揃いにくい特徴があるためです。

吹奏楽部の地域展開の特徴

  • 合奏・楽器演奏という活動形態ゆえに、楽器数・種類・保管・運搬というハードウェア的なコストがあります。
  • 音を出す・合奏するには防音・練習場所・時間帯の確保が必要で、学校だけでは限界を感じる場合があります。
  • 生徒にって「学校吹奏楽部でコンクール出場」「定期演奏会」という明確な目標がある反面、地域へ出ることで「学校の枠を超えた交流」「地域イベント出演」という新しい可能性が開けます。

地域にある音楽団・自治体の文化プログラム・地域住民の協力など、学校外の資源を活用できる可能性があります。例えば、地域施設を練習拠点にしたり、地域の吹奏楽団と交流したりすることで、生徒にとって活動の幅が広がります。

吹奏楽部の地域展開の課題

楽器・練習場所・合奏時間の確保

部員数が減少したり教員が指導できないとき、地域で代替するには施設・機材・運営がネックになります。学校校舎内だけでなく、地域の公共ホール・自治体施設・地域の音楽団の所有楽器などをどう活用するかが鍵となります。

指導者の確保

吹奏楽の専門指導ができる人材を地域でどう確保するかが大きな課題です。学校顧問の負担軽減という目的の一方で、地域指導者を育成・確保する必要があります。

部活動のアイデンティティ・所属感

学校名/学年・部活動としての「仲間感」「アイデンティティ」が地域クラブになると揺らぐ可能性があります。学校部活動としての「○○中・高校吹奏楽部」という枠がなくなるとき、生徒・保護者が感じる所属意識・モチベーションをどう維持するか、学校を離れても「部活として続けたい/地域で演奏したい」という生徒の意欲をどう引き出すかが課題です。

継続運営モデル

地域クラブ型に移行すると、資金(施設利用料・指導料・楽器保管費など)・運営組織(責任・契約・役割分担)・広報・地域との連携・他校生徒の受け入れなど、学校だけの時代と異なるマネジメントが必要になります。

地域クラブ型では、地域の施設や楽団、個人で所有している楽器を使用することになります。近年、楽器の価格が高騰しているため、活動に参加できるのは経済的に余裕がある家庭や楽器を所有している個人に限られてしまう可能性もあります。学校の部活動では誰もが等しく無償で活動できていたものが、資金面を理由に活動できなくなるのは、果たして教育的といえるでしょうか(学校によっては月ごとに部費を集めたり大会参加にかかる諸費用を部員から集めたりすることもあるので、完全無償ではない場合があります)。

楽器の価格を楽器店のWEBサイトで確認する(PR)

制度・規定の整備

大会参加・学校部活動としての登録・保険・安全管理など、地域クラブ化にあたって既存の制度が必ず合致するとは限りません。

吹奏楽コンクールでは、2024年度から「中学校の部」が「中学生の部」となり、合同バンド並びに地域バンドの参加が可能となりました。(出典:全日本吹奏楽連盟「会報すいそうがく」2024年7月号)

福岡県内で広がる“吹奏楽×地域展開”の実例

①中間市|なかまジュニア吹奏楽クラブ(NJBC)

  • 市内中学校4校の吹奏楽部が地域クラブ形式で合同活動
  • 定期的な合同練習・ブラスフェスタを実施
  • 高校の協力を得ながら拠点・指導者体制を確保
  • 2025年の吹奏楽コンクール筑豊支部予選では銀賞

人数不足でも“演奏できる環境があるから入部できる”という好循環を生んだ事例

(出典)中間市「なかまジュニア吹奏楽クラブ(NJBC)」実証事業 成果報告書

②北九州市|地域吹奏楽クラブ(複数中学校合同)

  • 上津役中・千代中・引野中・穴生中・黒崎中などから希望参加
  • 指導体制:顧問1名+大学生チューター9名
  • 目標:学校ではできない編成・曲に挑戦

“地域だからこそできる曲を演奏できる”→生徒のモチベーション向上に貢献

(出典)北九州市「地域吹奏楽クラブ(複数校参加)」実証報告書

③宗像市|宗像自由ケ丘管楽合奏団

  • 自由ケ丘中学校吹奏楽部を母体にした地域クラブ
  • 自由ケ丘中学校や他校の中学生も参加可能
  • 高校、大学、社会人団体の奏者も賛助団員として募集
  • 2025年の筑前地区中学生吹奏楽コンクールでは銅賞
  • 宗像市では、他にも「城山ウインドオーケストラ」「日の里吹奏楽団」「宗像吹奏楽クラブ」といった地域クラブがある

学校吹奏楽部が主体となって地域クラブ化した取り組み

③福岡県「地域文化クラブサポートネットワーク」制度

福岡県が新たに設置した「地域文化クラブサポートネットワーク」では、吹奏楽など文化部活動を地域主体で支えるため、吹奏楽指導が可能な地域指導者(サポーター)登録制度を整備しました。

目的内容
文化部活動の地域展開支援吹奏楽指導が可能な地域指導者の登録制度
学校負担軽減外部指導者・外部練習場所の活用促進
継続可能な体制づくり学校×地域の協働モデルの整備

2025年度から本格運用開始。
吹奏楽の地域展開を支える制度的な後押しとして注目されています。

“地域展開”で見えてきたメリットと課題

良い変化課題
演奏機会の増加楽器の保管・輸送
指導者が複数になる拠点施設の確保
他校との交流・仲間づくり送迎の負担
吹奏楽を続けやすい大会参加形式の調整が必要

地域展開=“楽になるだけ”ではなく、地域×学校×保護者×施設の協働が不可欠です。

まとめ|吹奏楽を続けられる地域をつくる

部活動は学校教育の一環として一定の教育効果があることから、部活動をなくそうとするのではなく、持続可能な活動ができるように地域との連携が求められています。

吹奏楽は「学校に吹奏楽部があるかどうか」で決まる時代から、「地域で演奏を続けられる環境があるか」に変わり始めています。

部活動全般

文化系・吹奏楽関連

福岡県内の自治体の取り組み

メディア・報道関連

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